あれから30年近く経った、ある日のことです。
地元のゲームショップへふらっと立ち寄った私は、レジに立っていた店員の顔を見て、思わず足を止めました。
A男でした。
20代の頃、私がゲーセン仲間に流されて切り捨てた、あのA男だったのです。
これは、20歳前後の私が、自分の卑怯さで一人の友人を傷つけてしまった話です。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:50代男性
・関連カテゴリ:人間関係の後悔(友人関係・集団同調圧力)
・体験形態:実体験ベース
・体験当時:20歳前後・大学生時代
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
ゲームセンター通いで見つけた、初めての「同類の友達」
これは私が20歳になった頃の話です。
当時は大学生で、ゲームセンター通いにすっかりハマっていました。
昔からゲームが好きで、いろんなアーケードゲームをワンコインでクリアできるくらいには、まあそこそこ上手な方だったと思います。
そうしているうちに、同じようなゲーム好きの常連から声をかけられるようになったんです。
次第に仲良くなり、気づけば親友以上の関係になっていました。
私としては、ゲームのことでここまで深く語り合える人と出会えたのは初めてで、「やっと本当の友達ができた」と感じたものです。
高校までは、自分と同じくらいゲームが好きな人なんて、周りに一人もいませんでしたから。
常連の家がたまり場、深夜までゲーム漬けの日々
ゲーセンの輪に入ったことで、私は一人暮らしをしている社会人の常連の方と特に仲良くなりました。
社会人だけあって、その人の家には家庭用ゲーム機やソフトが大量にあったんです。
そこがいつしか仲間内のたまり場のようになり、私もそこへ足繁く通うように。
大学を終えてからゲーセンへ向かい、夜まで遊んで、それから友人の家で深夜までゲーム。
帰宅するのは午前3時とかで、そこから風呂に入って就寝、6時には起きて大学へ行く準備、という生活でした。
我ながら、この友人にかなり依存した生活を送っていたと思います。
A男という年下の存在、仲間内で広がっていった「ハブリ」の風潮
そんなある時、仲間内で問題視される友人が出てきました。
仮にA男としましょう。
私自身は、A男に何かをされたわけではありません。
A男は私より年下で、年下なだけあって、敬語を使ったり、丁寧な対応をしてくれる人でした。
ちょっと距離を感じる瞬間はありましたけど、だからといって嫌いになるほどではなかったんです。
普通に仲のいい友達として接していました。
強いて何か挙げるとすれば、ゲームがそれほど上手じゃなかったということくらいでしょうか。
ゲーム大好きな集団においては、まあ少し残念な点ではあるかもしれません。
でも、それで嫌いになるほどのことでもないですよね。
しかし、他の友人たちはそう感じていなかったようでした。
やけにA男のことを嫌うんです。
理由を聞いてみると——
・ゲームをしている時、隣でずっと見られると気が散って嫌
・ベッタリ引っ付いてくるのが気持ち悪い
・仕草がダメ
そんな感じで、本当にしょうもない内容でした。
でも、そう感じる人が仲間内に多くいたようで、いつの間にか「A男は無視すべき」という風潮が生まれていったんです。
要するに、ゲーセン仲間から完全にハブりたい、ということでした。
私としては、確かにA男にそういうところがあるのは理解できました。
ベッタリくっついてくるのは、距離感が近すぎると言われればまあそうかな、とも思います。
でも、毛嫌いするほどのことかと言われると、正直「それぐらいで?」というのが本音でした。
「仲間から外されたくない」で、私もA男を無視した
ただ、その風潮に逆らうのは怖かったんです。
A男と仲良くしていたら、他のゲーセン仲間から嫌われるかもしれない——その怖さが、私の中で勝ってしまいました。
結局、私もゲーセン仲間と一緒にA男を無視するようになったんです。
A男のことが嫌いだったわけじゃありません。
それでも、ゲーセン仲間には私より上手な人や、「コイツ天才か?」と思うようなレベルのプレイヤーまでいました。
A男との繋がりを優先して、この仲間との関係が切れるのは絶対に避けたかった。
そういう気持ちから、私はA男が話しかけてきても無視したり、距離を取るようにしました。
今思えば、自分のことしか考えていない最低の判断だったと思います。
一週間でゲーセンに来なくなったA男、私はすぐ忘れた
その結果、A男はそれから一週間もしないうちに、ゲームセンターへ来なくなりました。
当然と言えば当然ですよね。
仲間だと思っていた相手から、いきなり冷たくあしらわれて、居場所がなくなったわけですから。
最初は罪悪感に押しつぶされそうになりました。
ふと思い出すと胸の奥がチクッとするような、嫌な感覚がたしかにあったんです。
でも、すぐに私はその罪悪感を忘れてしまいました。
日々のゲーセン仲間との楽しさに紛れて、A男のことは記憶の隅へ追いやられていったんです。
我ながら、酷い人間だったと思います。
地元のゲームショップのレジに立っていた、あの日のA男
そのことを後悔するようになったのは、それから何年も経って、地元のゲームショップへ立ち寄ったのがきっかけでした。
レジに立っていた店員——なんと、A男だったんです。
私はその瞬間、すっかり頭の隅に追いやっていたA男のことを、一気に思い出しました。
そして、強烈な後悔が押し寄せてきたんです。
あれからA男はどうしていたんだろうか。
いきなり仲間から冷たくあしらわれて、酷いショックを受けただろうな。
ゲーセンという居場所を失っただけでなく、ゲームについて熱く語り合える仲間まで、急にいなくなってしまったわけです。
当時は今と違って、ゲームが社会的に認められている時代じゃありませんでした。
ゲーム好きが集まれるサークルもなければ、SNSもない時代。
私自身、高校を卒業するまで、自分と同類のゲーム好きな友達なんて一人もできなかったんです。
それはA男にとっても同じはずでした。
ゲーセン仲間との交流は、A男にとってもどれほど貴重な居場所だったでしょうか。
私たちのせいで、A男はその場所を失ったんだ——そう思った時、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
関連記事:仕事を優先して親友を失った20代男性の後悔|結婚式SNSで気付いた完全な疎外
あの時、私が庇っていたら、何かが違っていたかもしれない
もし、あの時、私がA男を庇っていたなら、結果は違っていたかもしれません。
A男が何か問題行動を起こしていたなら、ハブられるのは仕方ない部分もあるでしょう。
でも、「気に入らない」という、本当につまらない理由でハブられただけだったんです。
私が間に立って取りなす行動をしていれば、A男はあの場所にとどまれた可能性は十分にあったと思います。
A男に悪いことをしたな——そう痛感したのが、私の後悔の始まりでした。
30年近く経った今、二度と同じ過ちを繰り返さないために
過去には戻れません。
A男との関係を修復することは、もう叶わないんです。
あの時の私は、自分が仲間外れにされたくないという保身で、一人の友達を切り捨ててしまった。
そのことは、一生消えない後悔として残っています。
ただ、二度と同じことを繰り返さないようにと、それからの私は自分の中の意識を変えました。
似たような状況——誰かが理不尽にハブられそうな場面に出くわした時、私はその人を庇うようになったんです。
他の人がどう思おうと関係ない。
理不尽な扱いを受けている人がいるなら、自分はその人の側に立つ。
それが、A男に対してできなかったことへの、私なりのせめてもの償いだと思っています。
編集部より
集団の中で生まれる「あの人を外そう」という空気は、一人ひとりが内心では理不尽だと感じていても、声をあげれば次は自分が標的になるかもしれない、という恐れから止まりにくいものです。とりわけ相手を直接嫌っていない人ほど、嫌悪ではなく”外されたくない”という保身で同調してしまいがちです。こうして誰かを傷つけた側の後悔は、相手と直接和解する機会がないまま自分の中だけに残り続けるため、何年経っても薄れにくいのも特徴といえます。
困った時の選択肢
【流されてしまう自分を、見つめ直したい方へ】
「本当はおかしいと思っていたのに、その場の空気に合わせてしまった」――そんな自分の行動パターンや感情を、振り返って言葉にしていく自己理解・セルフケアのアプリです。
→ 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
そのほか、状況に合わせて選べる窓口もまとめておきます。
・誰かを傷つけてしまった後悔を、一人で抱えず話したい
→ オンラインカウンセリング cotree
公的な窓口としては、つらい気持ちやもやもやを無料で相談できる「よりそいホットライン」(0120-279-338)もあります。
人との距離感や、流されない自分のつくり方をめぐる本は、たくさんあります。気になった一冊を、まず無料で試す方法もあります。
・読んでみる
→ Kindle Unlimited(30日間無料体験)
・聴いてみる
→ Audible(30日間無料体験)
勝ち負けや上手い下手よりも、同じ時間を一緒に楽しめることが、仲間との居場所をつくります。ボードゲームは、年齢や腕前を問わず、誰かと向き合って遊べる時間をくれる定番です。

