今でも、あの夏祭りの夜を夢に見ます。
花火の下で、あと一歩の勇気が出せなかった、あの夜のことを。
体験者プロフィール
・年代・性別:30代女性(体験は中学時代)
・関連カテゴリ:恋愛
・体験形態:実体験ベース
・現在の状況:初恋は実らないまま、今も当時を悔やんでいる
・体験時期:中学時代(2000年代)
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
授業中の落書きを、褒められた日
三十代の後半になっても、まだ引きずっている恋があります。
さかのぼると、中学一年生。十三歳の私の話です。
同じクラスにA君という男の子がいました。席は隣同士。好きになったのは、入学して少し学校に慣れてきた、五月ごろだったと思います。
その日、私は授業中にノートの端へ、なんとなく落書きをしていました。そうしたらA君が、小さな声でこっそり話しかけてきたんです。
「○○って絵、上手いな。この漫画のキャラ知ってる? 俺のノートにも書いてや」
それまでの私は、とにかく引っ込み思案で。同じくらい大人しい女の子とは話せても、男子には「おはよう」の一言すら、恥ずかしくて言えませんでした。
しかもA君は、すらっと背の高いスポーツマンで、いわゆる爽やか系のイケメン。クラスでも目立つ、上のほうにいる子でした。
そのA君に話しかけられて、おそるおそる描いた絵を「ありがとう、めっちゃ上手い、天才!」って手放しに褒められて。
私はもう、あっけなく一目惚れしてしまったんです。
クラスの人気者と、教室のモブキャラだった私
A君は見た目だけじゃなくて、性格も良くて、頭も運動神経も良くて。一年生のうちから、クラスだけじゃなく学校中の人気者になっていきました。
いっぽうの私は、恋愛漫画でいうところの、完全なモブキャラです。容姿も、頭も、運動神経も、性格も、どこを探しても誇れるものがない。それを自分がいちばんよく分かっていました。
だから告白なんて、とてもとても。連絡先を聞くことも、自分から話しかけることもできなくて。ただ、こっそりA君を見ていることしかできませんでした。
「私なんかが」という気持ちが、いつも先に立っていたんです。
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クラスが分かれても、廊下ですれ違うたびに
二年生に上がるとき、A君とはクラスが別々になってしまいました。すごく、残念でした。
それでも廊下で会えば、A君は相変わらず愛想よく「おはよ〜」「さよなら〜、また明日」と声をかけてくれて。たまに「なあ、このキャラ描いてくれへん?」って、絵のリクエストをくれることもありました。
もちろん、それは私だけへの特別じゃないと分かっていました。A君は誰にでも愛想がいい人だったから。
それでも私は、それだけで満足していたんです。ただの「おはよう」を返すだけで、精一杯なくせに。
コンビニでばったり会って、夏祭りに誘われた
その関係が、思いがけず動いたのが、中学二年の夏休みでした。
アイスを買いにコンビニへ行ったら、A君とばったり会ったんです。心臓が跳ねました。
そうしたらA君が、こう言いました。
「明日、××で夏祭りやるけど、良かったら一緒に行かん?」
一瞬、「A君と二人なんて緊張して無理!」と思って、断りかけました。
でも、次の瞬間に思ったんです。このチャンスを逃したら、次はもうない、って。
だから「うん」と答えました。
アイスを買うのも忘れて、走って家に帰って、母に「明日、学校の友達と夏祭り行くから、浴衣出して!」とお願いしました。次の日は、母に着付けしてもらった浴衣で出かけました。
花火の下で、告白しようとしたそのとき
心のどこかで、「A君だけじゃなくて、他の子も来るのかも」と思っていました。
でも、待ち合わせ場所にいたのは、A君ひとり。二人きりでした。
屋台を見てまわって、金魚すくいの前を通って、最後に花火を見て。自分でも信じられないくらい、良い雰囲気で。
このまま帰るなんて、もったいない。今日こそ言おう。勇気を振りしぼって、告白しようとした、まさにそのときでした。
A君が、少し恥ずかしそうに口を開いたんです。
「あの……ちょっと、聞いてほしい話があるねんけど、いい?」
私は、心のなかで叫びました。もしかして、告白される!? って。
息を止めて、次の言葉を待ちました。
でも、A君が何かを言いかけた、ちょうどそのタイミングで。
「あれ〜? A、どしたん、デート?」
A君の友達が数人、わいわいと割り込んできたんです。
A君は「デート?」には答えず、「お前らも夏祭り来てたん?」と、どこか誤魔化すように話をそらして。友達が去っていったあとは、気まずそうに「もう遅いし、帰ろっか」と言って、それでお開きになってしまいました。
あの夜、A君が何を言おうとしていたのか。私は、いまだに知りません。
彼が言いかけた言葉が、ずっと引っかかっていた
夏休みのあいだ、A君とは一度も会いませんでした。
会いたかった。でも、家も知らないし、連絡先も知らない。A君の連絡先を知っていそうな子も、思い当たりませんでした。
それに、正直こわかったんです。あの夜言いかけていたのが、もし告白じゃなくて、なにかネガティブな話だったらどうしよう、って。
だから、「夏休みが明けたら、また学校で会える。聞けそうなら、そのとき聞いてみよう」
そう自分に言い聞かせて、そのままにしてしまいました。
いま思えば、あの「また今度」が、いちばんいけなかったんですけど。
夏休みが明けて、「あの子、引っ越したよ」
夏休みが明けても、学校でA君に会えませんでした。
どうしてだろう、と思って。私にしては珍しく、勇気を出してA君のクラスまで行って、近くにいた子に聞いてみたんです。「A君、いますか?」って。
返ってきた言葉は、こうでした。
「A君なら、夏休みのあいだに○○県に引っ越したよ」
家の都合で、新幹線じゃないと行けないような、遠い県へ。
それっきり、でした。
引っ越し先を知っている子がいるかもしれないから、住所を聞いて手紙でも出せばよかった。頭ではそう思ったのに、そこまで動く勇気は、どうしても出ませんでした。
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そのあと私は、学校に行けなくなった
A君がいなくなったあと、私は学校でいじめに遭うようになって、そのまま不登校になりました。
だから卒業して、しばらくして同窓会の知らせが来たときも、行きませんでした。人と顔を合わせるのが、もう無理だったんです。
今になって思います。もし同窓会に行っていたら。そこにもし、A君も来ていたら。ほんの少しでも、続きがあったのかもしれないのに、って。
でも、あのときの私には、その一歩がどうしても踏み出せませんでした。
「もしあのとき」を、今でも数えてしまう
もし、あの夏祭りの夜、私からA君に告白していれば。
告白できなかったとしても、A君が何を言おうとしていたのか、聞けていれば。
もし、引っ越し先の住所を聞いて、手紙を出していれば。
もし、同窓会に行って、そこにA君も来ていれば。
——もしかしたら、A君と付き合えていた。私の初恋が、実っていた未来が、あったのかもしれません。
「どうしてあのとき、もっと積極的にいけなかったんだろう」
その後悔を、今でも夢に見るくらい、引きずっています。
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伝えられなかった私が、いま伝えたいこと
あのときの恋を振り返って、私が学んだのは、ひとつだけです。
次に同じような場面が来たら、今度こそ後悔しないように、動こう。それだけ。
「しない後悔より、する後悔」という言葉を、聞いたことがあると思います。
昔の私は、その意味がよく分かっていませんでした。でも今なら、心から思うんです。
動かないで後悔するより、動いて後悔したほうが、まだ諦めがつく。気持ちに、ちゃんとケジメがつくから。
もし今、初恋の相手がいる人。あるいは初恋じゃなくても、なんとなく良い雰囲気になっている相手がいる人。
その人に、伝えるかどうか迷っているなら。
どうか、「しない後悔より、する後悔」を胸に、一歩だけ動いてみてほしいです。
あの夜、花火の下で言えなかった私が、いちばんそう思っています。
いま、好きな人に一歩踏み出せずにいるあなたへ
この方の後悔は、「告白できなかったこと」以上に、確かめられるうちに確かめなかったことに根があるように見えます。連絡先を聞く、あの夜の続きを聞く——どれも「怖いから、また今度」で先送りにするうちに、相手は遠くへ行ってしまいました。
気持ちを固める前に、まず動くための小さな一歩を手元に置いておくと、同じ後悔は少し遠ざかります。
困った時の選択肢
【うまく動けなかった自分を、責めてしまう方へ】
「私なんかが」と自分で線を引いてしまう癖は、気持ちを書き出して眺めてみると、少しずつほどけていきます。まずは自分の心を整理するところから始めたい方に。
→ 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
そのほか、状況に合わせて選べる窓口もまとめておきます。
・次こそ、好きな人に自分から一歩踏み出したい
・「伝え方」そのものを学び直したい
・誰かに話して、気持ちを整理したい
公的な窓口としては、よりそいホットライン(0120-279-338)が、生きづらさや孤独の相談に無料で乗ってくれます。
そして、あの頃の気持ちを思い出しながら読める一冊を、まず無料で試す方法もあります。
・読んでみる
・聴いてみる
言えなかった想いや「もしあのとき」を書き留めておくと、少しだけ心が軽くなることがあります。一日数行を五年ぶん重ねられる連用日記は、後悔とゆっくり付き合っていく相棒になってくれます。

