家族が食べ終わった頃を見計らって、私は台所に立ちます。
妻が、冷めたおかずにもう一度火を通してくれる。私の分だけ、あとから温め直したものを、一人で食べる。
もう、それが我が家の当たり前になりました。
家族四人で外食したのは、たぶん去年のいつか。もう、いつだったか思い出せません。
子どもが嫌いなわけじゃないんです。むしろ、私が世界で一番好きなものを挙げろと言われたら、迷わず子どもだと答えます。
それなのに私は今、結婚なんてしなければよかったと、そう思っています。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:50代男性
・関連カテゴリ:結婚・離婚(結婚生活の後悔/現在進行形)
・体験形態:実体験ベース
・婚姻年数:16年以上(結婚継続中)
・家族構成:妻・子ども2人(長男・次男)
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
結婚して何年になるのか、いつも長男の歳で数える
結婚して何年になるのか。それを聞かれると、私はいつも長男の年齢を思い浮かべて、そこに数年足して答えを出しています。
付き合っていた期間も入れれば、妻と一緒にいる時間はもう二十年以上。結婚してからでも、少なく見て十六年にはなります。
家族としては、それなりのベテランの域に入ってきたんだと思います。
そのくらいの年月を、一緒に過ごしてきたはずなんです。
そのお父さんである私が、結婚するべきじゃなかったんじゃないか、と後悔している。
この気持ちは、たぶん五年ほど前から沸々と湧きはじめて、年々、大きくなっています。
妻のことは、まあ、ちょっと苦手ですけど(笑)。でも、子どものことは本当に可愛い。一番はやっぱり、長男です。当たり前かもしれませんが。
家族を大事に思う気持ちと、結婚なんてしなければよかったという気持ちが、同じ胸の中に一緒にある。自分でも、うまく説明できないんです。
子どもが生まれて、安定した会社に移った
子どもが生まれたとき、これからは私が頑張らないといけない、と思いました。
それで、数年勤めた会社を辞めて、もっと大きくて、将来が安定していそうな会社に移ったんです。
長男がまだ一歳になる前だったかもしれません。今思えば、ずいぶん思い切ったことをしたな、と。
ただ、転職はできたものの、一般社員としての再就職でしたから、お給料は下がりました。
朝はビルの清掃、休みの日はポスティングに出た
これでは家族がかわいそうだと思って、私は会社が始まる前に早起きして、ビルの清掃をしてから出社するようになりました。
本業は朝九時半から夜六時半まで。残業もあったので、夜八時、九時に帰ることもちょくちょくありました。
家に帰って、夕飯を食べて、寝て。また朝四時に起きて清掃に行って、八時に一度家に戻って、シャワーを浴びてから本業に向かう。
土日祝の休みの日には、ポスティングのバイトも少しやっていました。
これが、頑張るお父さんなんだ。家族を大事にするお父さんなんだ。そう思って、がむしゃらに働いていました。
若かったのもあると思います。でも、我ながらよくやっていたな、と。
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夜泣きの子を、目を閉じたまま抱いた夜
子どもの世話は、基本的に妻がしてくれていました。
それでも夜泣きのときは、何度か私があやしたのを覚えています。
ふらふらになりながら、目を閉じたまま抱っこして、背中をトントンして。早く寝てくれ、と思いながら。
不思議なもので、あんなにしんどかったのに、今となっては、楽しかった、いい思い出として残っているんです。
食べたいものを、食べさせてやりたかった
長男が生まれて数年後には、次男も生まれました。
頑張ったおかげで、私は朝のバイトも休みの日のバイトもしなくていいくらい、本業の会社で役職も、お給料も上げることができました。
私自身、子どもの頃に片親での暮らしがちょくちょくあって。ひもじい思いもしました。
だからせめて、自分の子どもたちには、食べたいものを食べられるくらいの暮らしをさせてやりたい。ずっと、そう思っていたんです。
それが、なんとか叶ったのかな。そう思えていた頃だったかもしれません。
それからも、仕事はどんどん忙しくなっていきました。
「なんでこんなに頑張ってるんだろう」と考えた日
次男が小学生になった頃、ふと考えたことがありました。
なんで自分は、こんなに頑張っているんだろう、と。
答えは、これまで書いてきたとおりです。家族のため。よくある質問と、よくある答えを、自分の中で自問自答したわけです。
それからも、ちょくちょく同じことを考えました。でも、答えが大きく変わることはありませんでした。
ただ、少しずつ、その答えの後に、言葉が続くようになってきたんです。
大事で可愛い家族のために働いている。……家族がいなければ、こんなに頑張らなくてもいいのに。もっと楽ができるのに、と。
今こうして書いていても、ずいぶんな考え方だな、と自分でも思います。
こんな人間は、父親になっちゃいけなかった
見ようによっては、働きすぎて疲れているお父さんが、かわいそうなんだ、とも受け取れるのかもしれません。
きっとカウンセリングにでも行けば、そんなふうに、私自身を労わってくれる言葉をくれるんだと思います。そんなこと言っちゃダメだ、と叱ってくれるのかもしれません。
でも私は、あの「家族がいなければ」という考えを、こう思っているんです。
これは、家族よりも自分を優先してしまう考え方だ。こういう人間は、家族を持ったり、結婚したりしないほうがいい人間なんだ、と。
そんな人がお父さんになっちゃいけない。そんなお父さんがいる家庭がかわいそうだ。奥さんも、子どもも、かわいそうだ、と。
自分で自分に、そう言い聞かせるみたいに、思ってしまうんです。
家族が食べ終わってから、一人で食べる
そうして今、私は家族の中で、しっかり孤立しています。たぶん。
家族と一緒にご飯は食べません。みんなが食べ終わった後に、一人で食べる。
妻ももう慣れたもので、私の分だけ、あとからおかずに火を通したり、作りはじめたりしてくれます。
細かいきっかけは、他にもいろいろありました。でも一番は、頑張るのに疲れた、でした。
それでも、まだ頑張っているつもりではいるんです。むしろ家族との時間がなくなった分、前より仕事に時間を使っているかもしれません。
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気づけば、父と同じ道を歩いている
いつの間にか私も、自分の父親と同じ道を進んでいるのかもしれません。
結婚と離婚を何度も繰り返した、あの父親のように。
でも、もしかしたら。あの父も、今の私と同じだったのかもしれない、と思うことがあります。
子どもが好きで、子どものためにやっているのに、なんでこうなるんだ、と。
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今は、結婚を後悔している
現時点での私は、結婚をしたことを後悔しています。
家族を背負ったことで、疲れてしまいました。私は、父親になってはいけない男だったんだと思います。
十五年前は、違いました。でも今は、こういう考えです。十年後は、また違うのかもしれません。
ただ、少なくとも今は、そう思ってしまっている。
それが、子どもたちに申し訳ないな、と思うんです。こんな父親で、すまなかったな、と。
家族のために走り続けて、疲れてしまった人へ
家族のために頑張るほど、その頑張りを支えてくれるはずの時間が、家族との間から少しずつ消えていくことがあります。
頑張ることでしか大切にできなかった不器用さを、そんなに責めなくてもいいのかもしれません。
もし今、誰にも言えないまま一人で抱えて疲れているなら、その気持ちを外に出せる場所を持っておくことも、めぐりめぐって家族のためになります。
困った時の選択肢
【誰にも言えず、一人で抱えてきた方へ】
「弱音を吐いてはいけない」と頑張り続けてきた人ほど、気持ちを言葉にする相手がいないまま消耗しがちです。
公認心理師などの専門家に、家族には言えない本音をそのまま話せる場所もあります。
→ 公認心理師に話せるオンラインカウンセリング【Kimochi】
そのほか、状況に合わせて選べる窓口もまとめておきます。
・家族との距離や、伝え方をもう一度考え直したい
→ 伝え方コミュニケーション検定(言葉の受け取り方・伝え方を学ぶ)
・まずは自分の気持ちの整理・自己理解から始めたい
→ 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
公的な窓口としては、「よりそいホットライン」が、暮らしや家族の悩みの相談に無料で乗ってくれます。
家族のことを、少し立ち止まって考えたい夜に。気になった一冊を、まず無料で試す方法もあります。
・読んでみる
→ Kindle Unlimited(30日間無料体験)
・聴いてみる
→ Audible(30日間無料体験)
一日の終わりに、その日思ったことを一行だけでも書き留めておくと、後から自分の気持ちを静かに振り返る助けになります。同じ日付に何年分もの自分が並ぶ連用日記を、そっと手元に置いてみるのもいいかもしれません。

